SAMRAI2014 結論と提案

昨日3月24日、当会主催の研究会SAMRAI2014が衆議院議員会館国際会議室にて無事開催され、有意義な発表と冷静な科学的識見が提示され成功の裡に閉会することができました。ご登壇いただいた諸先生方、ご参加いただいた方々、またボランテイアの皆様に深く感謝いたします。取り急ぎ、先日の結論と提案を報告いたします(広報)

SAMRAI2014 結論と提案
第一回放射線の正しい知識を普及する研究会・SAMRAI2014 が2015 年3 月24 日、日
本国衆議院第一議員会館で、「福島の低線量率放射線の科学認識と20km 圏内の復興」を主題に開催されました。一般の人たち、科学者・技術者、報道、国会議員ら240 人が出席するなか、日本、アメリカ合衆国、英国から5 人の放射線科学の第一線の専門家が、次の論点で報告しました。

  1. 福島軽水炉事故の低線量に関する総括と20km 圏内の最新の科学データ
  2. 高線量だったチェルノブイリ黒鉛炉事故との比較
  3. 低線量率放射線の生物学的理解
    放射線リスクの閾値なし直線LNT モデルの低線量域への適用の非科学の指摘
    低線率放射線の人体へのプラス効果(健康増進効果)
  4. 低線量放射線が無害であるにもかかわらず、諮問機関にもとづき日本政府により行われている過剰な放射線政策の非科学的な問題点
  5. これらの政策と誤解により社会が受けた大きな困難の克服のための社会教育の方策
  6. 他のエネルギー源に比べて核エネルギーの安全性の歴史的記録
  7. 科学的な知見に基づいた避難方針と事故を防ぐ措置により、福島第一原子力発電所による悲惨な結果を回避する方法

本科学会議の結果、福島の低線量率放射線では住民に健康リスクがないこと、そして20km 圏内の復興の遅れや、放射線の誤った情報の広がりによる社会の混乱が、国際的組織により、日本とその政府組織のみならず、世界的に生じていることが確認されました。(中略)

SAMRAI2014 で報告した5 人の科学者は、日本および世界が正しい放射線の知識を得て、社会の混乱を終息させるために、次のことを日本政府へ提案いたします。

  1. 福島県民の低線量率放射線の事実と住民に健康リスクがないことの科学理解を、国内外へ普及するために、日本政府は最大限努力する。
  2. 全ての国民、そして特に福島県で強制避難している人たちに正しい放射線の情報と科学が届くように、科学講習が受けられる環境を整えること。
  3. 政治的判断で強制された食品中の放射能の基準を、前原子力安全委員会の指標による基準に戻すこと。
  4. 福島20km 圏内の放射線の線量の現実的な評価をするために、専門科学者および、あるいは放射線管理官が個人線量計を装着した形で、住民のように住宅に滞在したり暮らすことが許可されるべきである。
  5. 福島第一原子力発電所20km 圏内のブラックボックス化した状況をあらため、浪江町で継続する和牛の飼育試験の民間プロジェクト等の帰還へ前向きな取り組みを国としても認識し、支援すること。
  6. 福島第一原子力発電所20km 圏内の地震津波で破壊されたインフラの早期な復旧を実現し、帰還希望者の受け皿を整えること。
  7. 日本の原子力施設は適切な改善がなされた後、可能なかぎり迅速に再稼働されるべきである。

高田 純博士 札幌医科大学教授、SAMRAI2014 プログラム委員長
モハン・ドス博士 フォックスチェイス・キャンサー・センター准教授
服部禎男博士 元電力中央研究所理事
中村仁信博士 大阪大学名誉教授
ウエイド・アリソン博士 オックスフォード大学名誉教授

http://rpic.jp/topics/images/docs_00078_3.pdf

放射線防護情報センターの下記ホームページにて、昨日に配布された研究会資料、核科学者の論文などがすべて読むことができます。ぜひともクリックしてご覧ください。

http://rpic.jp/cgi-bin/topics/topics.pl?topicsid=00078

書評「福島を原発の風評被害から救え」 中村仁信

書評「福島を原発の風評被害から救え」 中村仁信

 

 本書は一般書籍ではなく、宗教法人念法眞教発行の「鶯乃声」平成267月号から12月号に連載されたインタビューを編集したパンフレットです。東日本大震災以後の様々な風評についての過ちと、放射線の基礎知識を学ぶためのわかりやすくかつ総合的な入門書となっており、このホームページでも紹介させていただきます。

 

第一章の「放射線に対する誤解や勘違いを正す」の冒頭にて、中村先生は「これまでも、これからも、放射線による被害が出ることはありえない」と明確に言い切っています。国連が、百ミリシーベルト以下の低線量は問題ないとみなしていること、アメリカにおける50州のうち8州の平時の平均被ばく線量は27ミリシーベルトを超えているのに、癌の死亡率はむしろ他州より低いことなどの実例を挙げ、現在の日本が1ミリシーベルトにこだわる必要はないことをまず実証的に指摘しています。そして、放射線を浴びた後での人体のメカニズムを、活性酵素によるDNAへの損傷と、それを修復しようとするときに生じる突然変異だと説明した上で、だからと言ってこの突然変異がガンの発生に直接結びつくとは言い切れないこと、放射線に関わりなく人間の細胞には一日当たり数万単位でDNA損傷が起きていることなどを挙げ、冷静な議論のための基本を学ばせてくれます。

 

その上で、放射線を浴びることにより免疫力が低下し、癌になりやすいという俗説に対し、それは高線量の被ばくで起きることで100ミリシーベルト以下の場合はむしろ免疫力が高まるという実験結果もあること、「線量率」と「線量率効果」、つまり一瞬のうちに高線量を浴びることと、1年かけて浴びることではまったく意味が違うことなど、この問題を考える上での基礎的な知識が示されます。

 

その上で第2章「放射線の現在、子供の被ばく、甲状腺がん」では、ベクレル、シーベルト、グレイなど、中々素人にはわかりやすい単為が説明されたのち、ベクレルとは放射線を出す能力、放射線の強さを表す単位であり、現在敷かれている食品や水の放射能規制は余りにも厳しすぎることが指摘されます。

例えば飲料水は、現在日本国内では1キログラム当たり10ベクレルが基準値となっており、米国、EUはそれぞれ1200ベクレル、1000ベクレル(なお、WHO,FAOによる国際食品規格は1000ベクレル)。この視点から、現在騒がれがちな汚染水の問題も考えてみるべきだと中村先生は指摘しています。

 

また、しばしば危惧される子供の被ばくに対しても、小児が必ずしもガンになりやすいとは言い切れないこと(免疫力が高いなどから)よく例に挙げられるチェルノブイリ事故では、放射性排出物が福島の10倍であり、しかも食品の流通制限が行われず、放射性ヨウ素入りの牛乳を多くの人が飲んだこと、元々食生活上内陸部のチェルノブイリはヨウ素不足になりやすかったことなどによってたしかに甲状腺がんが増えたけれども、逆に甲状腺がんが発病した18歳未満の子供6845人のうち、死亡したのは15人であること、これは悪性率の低い癌だったことなどが説明されます。中村先生はがんの専門家として、福島の線量で甲状腺がんが増えるとは考え難いこと、かつ、チェルノブイリでもがん患者の増加は19864月の事故から4年後の1990年からであり、ここ数年の数字を議論することは意味がないことをきちんと指摘した上で、元々甲状腺がんは10人に一人の頻度で表れてくる可能性のある病気であり、総てを放射線のせいにすることの無意味さも指摘しています。

 

3章では、放射線は如何に微量でも健康被害をもたらすとしたマラーの実験の過ちや、宇宙飛行士の浴びている放射線量について述べられ、さらに第4章「必要なかった強制避難と放射線恐怖の代償」では、そもそも線量の計算自体に誤りがあること、何よりも、排出されるセシウムは134137だが、134137よりも放射線量は27倍強く、測定されるセシウムの73%は134であること、そしてセシウム134の物理的半減期は2年であり、1年で理論的には22%、実際のモニタリングでは30%も減っており、現在セシウムの減衰は進んでいるはずだと中村先生は指摘します。その上で、被ばくを怖れて子供を外で遊ばせなかったり、強制避難を行ったことによって起きた被害の方がよほど深刻であることが指摘されています。

 

5章「少しの放射線は体にいい」最終章「胎児・子孫への影響、環境・エネルギー問題など」においては、ホルミシス効果についても、臨床例やパイロットの記録などから、冷静な視点で放射線の治療効果や健康増進効果について触れられます。中村先生はその上で、ラッキー博士やアリソン博士とは異なり、より慎重な立場からホルミシスについては考える立場であること、現在の放射線専門家の一般的な科学者の立場は「100ミリシーベルト以下では過剰発ガンはないが、安全とは言い切れない、調べようと思ったら数十万から数百万のデータが必要なので不明と言わざるを得ない」というものだと、放射線はどんなに僅かでも害を与えるという考えの方が実は特殊なのだという指摘がされます。その上で、チェルノブイリの立ち入り禁止区域の森でもネズミや野生動物が増えているが何ら奇形は見られないこと、原爆被害者の子供についても40年以上の大規模な調査により遺伝的影響は実はみられていないことなど、被ばくによる子孫への影響など考える必要はないことが実証されつつあることが説明されています。

 

本書御希望の方は、放射線の正しい知識を普及する会事務局まで、メールなどでご連絡ください。(広報 三浦)

3月11日20:00~ニコ生放送 アゴラチャンネル に高田純教授が出演いたします

下記の番組に高田純先生が出演いたします、ぜひご覧ください

3月11日20:00~ニコ生放送 アゴラチャンネル
4年間の現地調査、今月の福島6号線線量調査結果、
福島復興を目指す放射線の正しい知識を普及する日本政府への提言SAMRAI2014
http://live.nicovideo.jp/watch/lv213391522

(追記)
アゴラ【言論アリーナ】なぜ正確な放射能情報が伝わらないのか
〜福島復興、現地調査をした専門家からの提言
昨晩の放送が、ユーチューブで観れます。
http://bit.ly/1FPTOOl

高田純

理学博士 札幌医科大学教授

医療人育成センター 物理学教室
大学院医学研究科放射線防護学
放射線防護情報センター http://rpic.jp/

福島第一原子力発電所の労働を描いた漫画「いちえふ」(第2巻)発売

福島第一原子力発電所の労働を描いた漫画「いちえふ」竜田一人著(第2巻)が、講談社より発売されました。本書でも主人公は地震後の現場での作業を淡々と、しかし漫画に絶対必要なユーモアを交えて描いていますが、第二巻では、工場現場だけではなく、取材を受けたときの思い出や、現地での著者自身によるボランテイアライブ(昔の歌が得意で施設のお年寄りに大変喜ばれたらしい)などのエピソードも盛り込まれて味わい深い一冊となっています。

特に印象的だったのは,この漫画を描いた後受けた取材のこと。

「体調はいかがですか」と聴かれ、「むしろ福島へ行く前より健康なくらいです」と答えて、大体の質問者はこれで案人事てくれるのだが、ただ一人、極端な質問を繰り返した人がいたとのこと。

「顔色が悪くて、頬もげっそりしておられるように見えますが、それはやはり放射能の影響で?」

さらに何を話しても「以前よりおやつれになられたのでは?」と繰り返され「以前の俺のこと知らんだろ!もともとこんな顔なんだよ」と切れそうになったそうです。ここでは著者は、汚染水も騒ぎすぎの面があるとか、オリンピックの聖火リレーを国道6号線でやったらどうかとかまで語ったらしいのですが、全くそれは無視されたとのこと。

また「過酷な現場で搾取されたのですね、常人にはとてもあの過酷な場所は・・・」と、最初から結論ありきの取材があり、それに対し「いやいや、働いているのは、みんな普通のおっさんですから」というと「そんな普通の方々の危険な被ばく労働の上に成り立っている職場なのですね」と、これまた結論に強引に結び付けられてしまったようです。

また、特定秘密保護法案について意見を訊かれたことがあって、実はその取材者が、漫画そのものも読まず、原発についての最低限の知識もない人だったこともあったとのこと。これは新聞からの取材だったようです、マスコミの方々は是非考えてほしいのですが、こういうのは取材じゃないです。著者は漫画で表現しているのだから、まずその内容について質問してほしい。

今も続く福島原発の作業が終わるまで著者は関わり続けると語っています。この第二巻もぜひお読みください。漫画としても、機械や作業現場のち密な描き方と個性的な作業員の姿など大変面白く読めるものになっています(三浦)