加地伸行 第四世代原発、残った希望(MSN産経ニュースより)

産経ニュースの記事を紹介させていただきます。加地伸行氏はご存知のように大阪大学名誉教授で東洋学者、儒教、中国文化についての様々な著書を執筆されておられます。

なお「パンドラの約束」DVDは今年10月31日発売予定です(アマゾン等)(広報)

立命館大フェロー・加地伸行 第四世代原発、残った希望

2014.6.22 03:02

 久しぶりに映画を観(み)た。アメリカのドキュメンタリー「パンドラの約束」である。

こういう大筋。原発反対の人物が問題を掘り下げてゆくうちに、原発が必要という立場に変わってゆく過程を描いている。

その人物とは、この映画の監督のロバート・ストーン。これまで反原発や地球環境保全などをテーマにして話題のドキュメンタリー映画を送り出してきた、実力派である。

この映画は、原発の歴史を明晰(めいせき)に示す。すなわち第一世代から発展して、現在は第四世代の開発が進む。問題の福島第1原発は古い世代であり、大量の使用済み燃料を出し処分に困るようになる。しかし、最新の第四世代の例えば高速炉は、クリアすべき技術的課題は多いものの、第一世代と同量の燃料で数倍の電力を生み出せ、放射性廃棄物を炉内で燃やせる。廃棄物の再利用をしており、古い世代の原発の問題点を技術の進歩で解決しつつある。

ところが、原発反対論者は古い世代の古い知識レベルのまま反対しているにすぎない。いわばイメージ反対論である。

反対論者が頼る再生エネルギー発電(太陽光・風力など)はコストが高い上に実力がなく、原発に太刀打(たちう)ちできない。結局、現在では火力発電が頼りになるが、コスト高のみならず、決定的な致命傷がある。環境破壊の最大原因であることだ。火力発電によって地球上に厖大(ぼうだい)なCO2を排出し、地球温暖化を進めている。これが地球の自滅に至ることは言うまでもない。

ギリシャ神話に依(よ)れば最高神のゼウスは災いなどを封じ込めた箱をパンドラに与えた。その開けてはならない玉手箱を人間社会に来たパンドラが開いたため、災いも世に散らかってしまった。しかし急いで閉じたので希望だけが残ったという。

この〈希望〉こそ第四世代原発に依る発電であり、火力発電は災いを生むだけである。そういうことを映画は語っていた。心に残る見識である。

日本の原発問題は(1)地震・津波によって破壊された福島第1原発問題と(2)原発一般論との2つに分けて考えるべきである。

(1)の場合。廃炉に直進せよ。同原発の周辺地域を国有化し、人が住まないようにしつつ、慎重に無害化の道を取れ。

(2)の場合。日本の原子力技術は一流である。第四世代さらには第五世代へと技術革新をし、たとい活断層の上にあり震度7の地震が来ても耐えうる最新の原発を創出し、かつ世界に輸出して広めるべきであろう。

いま日本では、元首相の2人その他が何の定見も知識もないのに、ただ感傷的に原発批判をしている。愚かな話である。

世の人々も、無責任な原発反対論に耳を貸すよりも、「パンドラの約束」をまず観るべきであろう。文科省も思い切って全国の中学生高校生に同映画を観させ、見識というものも学ばせるべきではなかろうか。

『荀子(じゅんし)』勧学篇に曰(いわ)く、「高山に登らざれば、天の高きを知らず。深谿幽谷(しんけいゆうこく))に臨(のぞ)まざれば、地の厚(あつ)きを知らず」と。(かじ のぶゆき)

http://sankei.jp.msn.com/life/news/140622/art14062203020002-n1.htm

http://sankei.jp.msn.com/life/news/140622/art14062203020002-n2.htm

美味しんぼ」論争・科学者からの反論~非科学的な“風評加害”は許せません(高田純札幌医科大学教授論文)紹介

以下に、ネットで公開されている月刊VOICE掲載の札幌医科大学高田純教授の論考「「美味しんぼ」論争・科学者からの反論~非科学的な“風評加害”は許せません」の後半部を紹介いたします。高田氏は前半でこの漫画の問題点を説明しておられますが、さらに重要なのは、福島復興と帰還は可能であることを論じた後半部と思い、そちらを中心に紹介させていただきました(広報)

高田純(札幌医科大学教授)

(前略)

政府の誤推定では未来永劫、浪江町に帰れない

私は先述のように、東日本大震災の翌4月8~10日に福島県民の放射線衛生を調査しました。浪江町民から、残してきた牛たちを見てきてほしいといわれ、末の森に行きました。一人で畑の放射能測定をしていたら、遠くにいた20頭ほどの黒毛和牛たちが集まってきました。飼い主たちがいなくて淋しかったのでしょう。そのなかで下痢や脱毛など、急性放射線障害を示す牛は一頭もいませんでした。これは低線量率の証拠です。現地では、牧畜家の元浪江町議会議長の山本幸男さんに偶然出会いました。それ以来、牛たちの放射線衛生調査を継続しています。最大の悲劇は、政府による非道な殺処分です。牛3500頭、豚3万頭、ニワトリ44万羽、馬100頭が犠牲になりました。民主党政権から始まった風評加害事件はまるで中世の魔女狩りです。

誤解されるようですが、放射能は伝染病ではありません。放射能は弱まり、消滅する法則があります。半減期が短い核種ほど強い放射線を出しますが、最初に消滅します。半減期が約8日間の放射性ヨウ素は、すでに消滅しています。大気中および体内のセシウムも3年たったいまでは大幅に減少しています。

福島第一原発の境界敷地でも2日間の測定をしました。胸に装着する個人線量計で積算線量を確認すると、0.1ミリシーベルト。震災元年4月の2泊3日の現地調査では1日当たり0.05ミリシーベルトです。この低線量率は危険でないので、私は持参していた防護服とマスクを着用しませんでした。もちろん当日、私に鼻血はなく、脱毛もなく、いまも髪はフサフサです。

2年目の3月に、政府が年間50ミリシーベルトを超えると断定し、帰還困難区域と指定した浪江町末の森にある山本さんの自宅で、2泊3日の調査を行ないました。すると1日の実線量は0.05ミリシーベルト、年間17ミリシーベルトだったのです。政府の調査は畑での空間線量率を測り計算しているので、3倍くらいの過大の線量評価になっています。政府の誤った線量推定では未来永劫、浪江町には帰還できません。この地は政府が放置し、まったく除染がされていないのです。放牧地と自宅周辺の除染をすれば、すぐに年間5ミリシーベルト以下に改善できます。

5月14日、日本人初の国際宇宙ステーション船長を務めた若田光一さんが、半年ぶりに、ソユーズ宇宙船でカザフスタンの草原に帰還しました。そのときの映像をテレビで観ましたが、彼は至って元気そうでした。もちろん、鼻血は垂れていません。宇宙飛行士が、国際宇宙ステーション内で受ける線量率は1日1ミリシーベルトです。この線量率は、地表の平均値の30~300倍です。今回の若田さんの場合は188ミリシーベルトになります。

私の調査グループは、宇宙飛行士522人の線量と死因を調査しています。522人の宇宙飛行士とアメリカの一般人の死因を比べて、特段の違いは見つかっていません。月面着陸したアームストロング船長は2012年8月に、82歳でこの世を去りましたが、アメリカ人の平均寿命79歳よりも3年長く生きました。

生命にとって、受けるエネルギーは総量よりも毎日の量がとくに重要です。放射線でいえば、1日当たりのエネルギー=線量・線量率(ミリシーベルト/日)です。生命活動は休みなく持続し、細胞に寿命があって再生されているからです。たとえば、白血球であれば3~5日、小腸栄養吸収細胞が24時間です。だから、各細胞が受けたエネルギーは蓄積しません。宇宙飛行士が健康を維持している理由がここにあります。

震災から3年たったいま、福島県民の多くは、セシウムによる線量は年間1ミリシーベルト程度か、それ以下です。これは、食品摂取による体内セシウムも含めての値です。線量率は宇宙飛行士の300分の1程度で、健康被害のリスクはまったくありません。食品流通の目的で農地や放牧地さえ除染すれば、20km圏内の産業も再建できます。

昭和20(1945)年8月、広島は70年間、草木が生えないといわれました。しかし同年10月には、市内電車も全線再開し、人たちも少しずつ戻ってきました。翌年には市内で農作物が収穫できていますし、広島市の女性の平均寿命は日本一に輝いたこともあります(86.3歳、2005年)。当然、福島県は完全に復興できます。(後略)

http://shuchi.php.co.jp/article/1964?

http://shuchi.php.co.jp/article/1964?p=1

 

原発ドキュメンタリー映画「パンドラの約束」を見て想うこと(生活者主権の会ホームページより)

「生活者主権の会」ホームページhttp://www.seikatsusha.org/に、下記の原稿が掲載されました。

著者のご了解の上、紹介させていただきます。

(広報)

原発ドキュメンタリー映画「パンドラの約束」を見て想うこと

東京都文京区 松井 孝司

 ロバート・ストーン監督が作成したドキュメンタリー映画「パンドラの約束」は、反原発から原発容認に転換した環境保護運動家の人々を記録した映画であった。ロバート・ストーン自身も環境破壊の歴史を描く前作「アースデイズ(2009年)」を制作する過程で原子力エネルギーについて考えを変えたと述べている。(中略)

映画は原発に反対していた環境保護運動家の人たちが原発容認へ主張を180度転換した理由を語るインタビューを通して、世界を貧困から救うエネルギーは原子力しかないことを説明するため様々のデータや科学技術を紹介し、現行の軽水炉型原発の開発の歴史や安全性の高い最新型原子炉への挑戦を追っている。

2013年1月に米国のサンダンス映画祭で上映された際には観客の75%が原発反対だったが見終わった後約8割が原子力支持に変わったそうだ。第4世代の原子炉、統合型高速炉(IFR)は全電源が喪失し核反応が暴走しても過熱により自動的に運転が止まり、軽水炉原発が残す核廃棄物も燃料として使用できるなど、原子炉設計にはルネサンスが起こっており、原子力という「パンドラの箱」からは広島、長崎の原子爆弾、核実験での事故、米国のスリーマイル島、旧ソ連のチェルノブイリの原発事故につづき福島第一原発事故の災禍が飛び出してきたが、パンドラの箱の底にはまだ人類にとっての希望が残っているとする筋書きである。

米国はロシアの核弾頭を10年以上買い続けており16000の核弾頭をすべてエネルギーに変えて再利用しており、米国の電力の20%を担う原子力の半分は核兵器の再利用であるという。世界に存在するすべての核兵器を原子力エネルギーとして再利用し、消滅させることができれば歓迎すべきことである。

映画には登場しないが反原発団体グリーンピースの共同創設者の一人であるパトリック・ムーアも2005年4月28日の米国上院エネルギー天然資源委員会で「原子力は化石燃料に代わって世界中のエネルギー需要を満たすことのできる唯一のエネルギー源である」と証言している。原子力を肯定するようになったのは「原子力は安全でクリーンである」ことが理由の一つであるが、グリーンピースが余裕資金で年金制度を設けたことにも疑問をもったようだ。

グリーンピースの活動費は当初400万人の会費だけだったが、ロックフェーラーなどリッチな財団からの資金が団体の活動資金の80パーセントを占めるようになったという。パトリック・ムーアは炭酸ガスの増加による地球の温暖化を認めていない。グリーンピースを離脱したのは科学的根拠に依らず石油資金の援助を得て運動を展開することを疑問視したのではないか?「パンドラの約束」に登場しないのは映画の趣旨に合わないからだろう。

映画にはパトリック・ムーアと比肩される米国の環境保護運動の巨頭スチュアート・ブラントが登場する。スチュアート・ブラントが原発推進派になったのも21世紀に入ってからである。2001年9月11日のニューヨーク貿易センタービルへの自爆テロ以降オサマ・ビン・ラデインへの石油資金供与を問題視したブッシュ共和党政権が原子力を見直し推進するようになる時期と環境保護運動家の大物が各地で原発賛成に転換した時期が一致するのは偶然だろうか?

原発稼働の停止がつづいているため日本から石油産出国への巨額の資金の流出も増大している。アラブ首長国連邦(UAE)は産出する石油は輸出に回し、UAEで消費する電力は原子力で賄うために原発建設事業を韓国に発注し、韓国はバラカ原子力発電プラント1号炉の建設に着手した。日本から流出する資金で韓国が原子炉を建設する構図になっているのだ。原発稼働に60年の長期保証をつけており韓国にとっては失敗が許されない国運を賭けた大事業である。絶対に事故を起こさないよう日本は福島原発事故の経験を踏まえて技術支援をすべきだが、これが成功すると日本の原子力産業はかっての半導体産業の二の舞になる可能性もある。

中国は化石燃料による大気汚染を回避するためクリーンな太陽光発電を推進しようとしたが、太陽光パネルの過剰生産と高コストのため採算がとれずパネル製造企業の倒産が相次いだ。太陽光の利用には降雨、曇天、夜間でのバックアップ電源も必要になるため二重投資となり資金が乏しい国の貧困を救う手段にはならないのだ。

中国の膨大な電力需要を賄うために中国は第3世代の加圧水型原子炉約50基の稼働または建設を計画している。現行の軽水炉原発とは全く異なる方式の第4世代原発も開発しようとしており、トリウムによる安価で安全な原子力発電を推進するために2012年10月末に上海でトリウム原子炉の国際会議を開催した。中国科学院はトリウム溶融塩炉の実用化を決定し、2017年を目標に2メガワット規模の固体燃料・溶融塩冷却の固有安全性を備えた実証炉を完成させるという。(中略)

日本が原発ゼロを実現すれば日本の多くの原子力関連技術者は間違いなく韓国、中国に流出するだろう。ロバート・ストーン監督が「下手をすると20年後にはアメリカも日本も中国から最新型の原子炉を買うことになりかねない」と懸念する通りだ。

日本は世界に先行して現行の軽水炉原発から離脱して原子力発電の安全神話を払拭し、新しい固有安全性を備えた第4世代の小型原子炉を開発して国内の都市近郊で普及させることを期待したいが、核エネルギーと放射線の本質について正しい知識を日本国民に周知徹底しなければ実現は難しい。

「パンドラの約束」はジャーナリストの田原総一郎氏が指摘するように浅薄な原発推進映画ではない。軽水炉型原子炉普及の杜撰さをごまかさず描いており、不正確な知識で放射線の風評被害に振り回される多くの日本国民に見て欲しい映画である。

http://www.seikatsusha.org/toukou/data/tou-2014/tou-14.06.10.htm